引き続き、M&Aに関する基準を綴っていく。
【会社法】
①決議基準
企業買収をする場合、その買収比率を決める重要な要素は、株主総会の決議基準である。
会社法上、普通決議は出席議決権数の過半数(50%+1株)であり、特別決議は75%以上と定められている。
②株式譲渡
会社法上、株式譲渡手続きは、売主買主双方により署名された株式譲渡申請書及び添付書類(株券原本を含む)が会社に提出されることにより行われる。
株式に譲渡制限が付されている場合には取締役会において譲渡承認手続きを行い、それに基づき株券への裏書と株主名簿の書き換えが行われることにより、株式譲渡手続きが完了する。
なお、株式譲渡申請書については、所定の印紙税の納付がされなければならない。
【企業結合規制】
競争法上、いかなる個人または事業者も、インド国内の関連市場における競争に対して著しい悪影響を及ぼすか、またはそのおそれがある企業統合を行うことはできず、これに違反した企業統合は無効と規定されている。
日本企業がインド企業とのM&Aによりインドに新規に進出する場合、インド国内でのシェアの拡大はあまり生じず、企業結合届出を行う必要が生じることはあまり想定されない。
日本企業自体の事業規模が一定規模を超える場合、インド競争委員会への事前届出自体は行う必要があるため、M&A実施のスケジュールに影響を与えることになる。
①要件
個人もしくは事業者による他の事業者の取得、または事業者の合併の中で、結合後に取得者(または取得者グループ)と被取得者を合わせて以下の8つのいずれか1つの基準に該当する場合、競争法上、事前届出の対象となる企業結合に該当する。
「取得者グループ」とは、直接または関節に、
⑴26%以上の議決権を有する関係にあること
⑵取締役会メンバーの過半数を指名していること、または
⑶経営または業務を支配していることのいずれかを満たす関係にある2以上の企業グループをいう。
〈取得者と被取得者の合計〉
[インド国内 資産]200億ルピー超
[インド国内 売上]600億ルピー超
[インド国内外 資産]10億米ドル超(うちインド国内で100億ルピー超
[インド国内外 売上]30億米ドル超(うちインド国内で300億ルピー超)
〈取得者グループと被取得者の合計〉
[インド国内 資産]800億ルピー超
[インド国内 売上]2,400億ルピー超
[インド国内外 資産]40億米ドル超(うちインド国内で100億ルピー超
[インド国内外 売上]120億米ドル超(うちインド国内で300億ルピー超)
②例外
ただし、インド国外でのみ発生する企業結合であって、インドの市場に対する関連、効果が重大でないもの等一定の企業結合については、通常届出は不要であるとされている。
また、支配、株式、議決権または資産が取得されようとしている事業者のインド国内の連結ベースでの資産が35億ルピー以下またはインド国内の連結ベースでの売上高が100億ルピー以下の場合、届出は不要である。
さらに、2022年3月26日までの5年間、
⑴上記適用除外基準は維持されつつ、当該基準は合併の場合にも適用されることが明確化され、
⑵事業の一部譲渡の際の適用除外の算定対象は当該譲渡対象事業にかかる監査済み財務諸表に基づくインド国内における資産または売上高であり、譲渡会社の資産または売上高を基準にするものではないとの解釈も示された。
③手続き
届出義務がある場合、企業結合に関する当事者の取締役による機関決定または拘束力のある合意があった日から30日以内に届出を行う必要があったが、事案に応じて十分な情報を揃えて届出することができるよう、インド企業省による2017年6月29日付け告示により、かかる期間制限は同日から5年間適用除外となっている。
届出の書式には2種類あるが、通常は、簡易な様式である様式1号にて届出する。
当該届出の後、インド競争委員会は、届出内容を審査し、当該企業結合が競争に著しい悪影響を及ぼさない、または及ぼすおそれがないと判断した場合には、当該企業結合を承認し、インド競争委員会が不承認とした企業結合は効力を生じないことになる。
インド競争委員会は原則として届出から30営業日以内に一時的な審査結果を出すとされているが、追加的な審査が必要な届出案件については210暦日以内に最終的な審査結果を出す。
届出から210暦日を経過した場合は自動的に承認されたものとみなされる。